解体工事を請け負うために必要な手続きは、ひとつではありません。建設業許可の「解体工事業」と、建設リサイクル法の「解体工事業登録」という、根拠となる法律が異なる2つの制度があります。
この2つは名前が似ているうえに、どちらか一方があればよい場面と、そもそも両方の話がかみ合わない場面があるため、非常に混乱しやすい分野です。「登録は済んでいるから大丈夫」と思っていたら請け負えない金額だった、というご相談は実務でも起こります。
この記事では、2つの制度の違いを条文にもとづいて整理し、ご自身にどちらが必要かを判断できるようにします。愛知県で手続きする場合の具体的な要件もあわせて解説します。
結論:金額で分かれます
- 500万円未満の解体工事だけを請け負うなら、解体工事業登録(建設リサイクル法第21条)
- 500万円以上の解体工事を請け負うなら、建設業許可の解体工事業(建設業法第3条)
- 建設業許可(土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれか)を持っていれば、登録は不要です(建設リサイクル法第21条第1項の括弧書き)
- 登録は工事を行おうとする区域を管轄する都道府県知事ごとに受けます。愛知・岐阜・三重で工事をするなら、原則としてそれぞれの県で登録が必要です
- 登録の有効期間は5年で、更新が必要です(同条第2項)
2つの制度の比較
| 解体工事業登録 | 建設業許可(解体工事業) | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 建設リサイクル法第21条 | 建設業法第3条 |
| 請け負える金額 | 500万円未満の解体工事 | 金額の上限なし |
| 手続きの種類 | 登録 | 許可 |
| 単位 | 工事を行う区域の都道府県ごと | 営業所の所在地(知事許可・大臣許可) |
| 有効期間 | 5年 | 5年 |
| 求められる人的要件 | 技術管理者の選任 | 経営業務の管理責任者・営業所技術者等 |
| 財産的要件 | なし | 自己資本500万円以上など |
もっとも大きな違いは、財産的な要件と経営経験が求められるかどうかです。解体工事業登録には財産的基礎の要件がないため、建設業許可より取得のハードルは低くなっています。
解体工事業登録とは(建設リサイクル法第21条)
建設リサイクル法第21条第1項は、解体工事業を営もうとする者は、その業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならないと定めています。
この制度は、解体工事の現場で分別解体と再資源化を適正に行わせるために設けられました。建設業許可のような金額の下限がないため、軽微な解体工事しか請け負わない場合でも登録が必要です。ここが建設業許可と決定的に異なる点です。
登録が不要になる場合
条文には除外規定があり、建設業法別表第一に掲げる土木工事業、建築工事業又は解体工事業の許可を受けた者は登録の対象から外れます。
つまり、これら3つのうちいずれかの建設業許可を持っていれば、あらためて解体工事業登録をする必要はありません。「解体工事業」の許可でなくても、土木工事業か建築工事業の許可があれば足ります。
なお、登録を受けた後にこれらの許可を取得した場合、その登録は効力を失います(同条第5項)。許可取得後に登録の更新をする必要はありません。
登録は「工事をする区域」ごと
見落とされやすいのが登録の単位です。建設業許可が営業所の所在地で知事許可・大臣許可に分かれるのに対し、解体工事業登録は工事を行おうとする区域が基準です。
愛知県に本社があっても、岐阜県や三重県で解体工事を請け負うのであれば、それぞれの県知事の登録が必要になります。事業エリアを広げるときは、県をまたぐ度に登録が増えることを見込んでおいてください。
技術管理者を選任する義務
解体工事業者は、工事現場における解体工事の施工の技術上の管理をつかさどる技術管理者を選任しなければなりません(同法第31条)。
さらに、請け負った解体工事を施工するときは、技術管理者に他の従事者を監督させる義務があります(同法第32条)。技術管理者を選任しなかった場合、20万円以下の罰金が定められています(同法第51条第3号)。
技術管理者になれる人
技術管理者の要件は、解体工事業に係る登録等に関する省令第7条で全国共通に定められています。次のいずれかに該当する必要があります。
実務経験による場合
- 解体工事の実務経験8年以上(学歴は問いません)
- 大学・高等専門学校(土木工学・建築学・都市工学・衛生工学・交通工学などの所定学科)を卒業し、実務経験2年以上
- 高校・中等教育学校(同じく所定学科)を卒業し、実務経験4年以上
土木工学の学科には、農業土木・鉱山土木・森林土木・砂防・治山・緑地・造園に関する学科も含まれます。
資格・試験による場合
- 1級建設機械施工管理技士、2級建設機械施工管理技士(第一種・第二種)
- 1級土木施工管理技士、2級土木施工管理技士(種別「土木」)
- 1級建築施工管理技士、2級建築施工管理技士(種別「建築」「躯体」)
- 1級建築士、2級建築士
- 技術士(建設部門)
- 技能検定1級「とび・とび工」の合格者(2級の場合は、合格後に解体工事の実務経験1年以上)
- 国土交通大臣の登録を受けた試験(解体工事施工技士試験)の合格者
講習の受講による実務経験年数の短縮
国土交通大臣が実施する講習または国土交通大臣の登録を受けた講習(解体工事施工技術講習)を受講すると、必要な実務経験年数が次のとおり短縮されます。
- 学歴を問わない場合:8年以上 → 7年以上
- 大学・高等専門学校(所定学科)卒:2年以上 → 1年以上
- 高校・中等教育学校(所定学科)卒:4年以上 → 3年以上
実務経験年数の数え方など運用の詳細は、申請前に愛知県の公式情報でご確認ください。
登録が拒否される場合
建設リサイクル法第24条第1項は、登録を拒否しなければならない場合を列挙しています。主なものは次のとおりです。
- 登録を取り消され、その処分の日から2年を経過しない者
- この法律に違反して罰金以上の刑に処せられ、執行を終わってから2年を経過しない者
- 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 法人でその役員のうちに上記に該当する者があるもの
- 技術管理者を選任していない者
- 申請書や添付書類に重要な事項の虚偽記載があるとき
建設業許可の欠格要件が原則5年であるのに対し、こちらは2年を基準とする項目がある点が異なります。
無登録で営業した場合の罰則
登録を受けずに解体工事業を営んだ場合、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が定められています(同法第48条第1号)。不正の手段で登録を受けた場合も同様です。
建設業許可の「解体工事業」とは
500万円以上の解体工事を請け負う場合は、建設業許可が必要です。
解体工事業は、もともと「とび・土工工事業」に含まれていましたが、平成28年6月に独立した業種として新設されました。愛知県では同年6月以降、解体工事業の許可申請の受付が始まっています。
かつて設けられていた経過措置(とび・土工工事業の許可業者が解体工事を施工できる期間、および技術者要件のみなし措置)は、いずれも既に終了しています。現在は解体工事業の許可を受けていなければ、500万円以上の解体工事を請け負うことはできません。とび・土工工事業の許可しかお持ちでない場合は、業種追加の手続きが必要です。
許可の要件(経営業務の管理責任者、営業所技術者等、財産的基礎、誠実性、欠格要件)については、建設業許可申請の4つの要件とは?で詳しく解説しています。
登録の手続きの流れ
愛知県で解体工事業登録を受ける場合、おおまかな流れは次のとおりです。
1. 技術管理者を決める
最初に確認すべきはここです。要件を満たす人がいなければ登録できません(同法第24条第1項第8号)。社内に該当者がいない場合は、資格の取得や解体工事施工技術講習の受講から検討することになります。
2. 申請書と添付書類を準備する
申請書には、商号・名称、営業所の名称と所在地、法人の場合は役員の氏名、技術管理者の氏名などを記載します(同法第22条第1項)。あわせて、登録拒否事由に該当しないことを誓約する書面などを添付します(同条第2項)。
3. 都道府県に申請する
工事を行おうとする区域を管轄する都道府県知事に提出します。愛知県の場合の窓口や手数料、様式は県の公式ページで公開されています。
4. 登録通知を受け取る
登録が実施されると、都道府県知事から通知が届きます(同法第23条第2項)。
登録後に必要になること
登録して終わりではありません。次の対応が継続的に必要です。
- 5年ごとの更新:有効期間が満了する前に更新申請をします。なお、期間満了までに処分がされない場合、従前の登録は処分がされるまで効力を持ちます(同法第21条第3項)
- 変更の届出:商号・名称、営業所、役員、技術管理者などに変更があったときは、その日から30日以内に都道府県知事へ届け出なければなりません(同法第25条第1項)。届出をしなかったり虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金が定められています(同法第50条第2号)
- 標識の掲示:営業所および解体工事の現場ごとに、公衆の見やすい場所へ、商号・名称、登録番号などを記載した標識を掲げる義務があります(同法第33条)
- 帳簿の備付け:営業所ごとに帳簿を備え、営業に関する事項を記載して保存する義務があります(同法第34条)
建設業許可の事業年度終了届(決算変更届)のような毎年の決算報告は求められませんが、こうした日常的な義務は継続します。
自分にはどちらが必要か
判断の手順は次のとおりです。
1. 請け負う解体工事の金額を確認する
500万円以上(消費税込み)の工事を請け負う可能性があるなら、建設業許可が必要です。金額の判定では、分割して契約した場合は合算され、注文者が材料を提供する場合はその市場価格も加算される点にご注意ください。
2. すでに建設業許可を持っているか確認する
土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれかの許可があれば、登録は不要です。500万円未満の解体工事はその許可の範囲で請け負えます。
3. 工事をする都道府県を確認する
登録で対応する場合、工事をする県ごとに登録が必要です。県をまたぐ工事が増えるようであれば、建設業許可の取得を検討したほうが結果的に手間が少なくなります。
よくある質問
Q. 解体工事業登録があれば、500万円以上の工事も請けられますか。
請けられません。500万円以上の解体工事には建設業許可が必要です。登録はあくまで軽微な建設工事の範囲を前提とした制度です。
Q. とび・土工工事業の許可がありますが、解体工事はできますか。
現在はできません。経過措置は終了しているため、解体工事業の業種追加が必要です。
なお、登録が不要になるのは土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれかの許可を持っている場合です。とび・土工工事業の許可はこれに含まれないため、500万円未満の解体工事を請け負う場合であっても解体工事業登録が必要になります。
Q. 建設業許可を取ったら、登録はどうすればよいですか。
土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれかの許可を受けた時点で、登録は法律上効力を失います(建設リサイクル法第21条第5項)。更新の手続きは不要です。
Q. 内装解体は解体工事業にあたりますか。
原則としてあたりません。建設業許可事務ガイドラインは、それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当するとしています。内装を撤去する工事は、内装仕上工事業で施工したものを解体する工事にあたるため、内装仕上工事業に区分されるのが原則です。
同じ考え方で、屋根の葺き替えに伴う既存屋根の撤去は屋根工事業、外壁の張り替えに伴う撤去は該当する専門工事業に区分されます。
「解体工事業」に区分されるのは、専門工事の一部として行う解体ではなく、工作物の解体そのものを目的とする工事です。また、総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を解体する工事は建築一式工事、土木工作物を解体する工事は土木一式工事に該当します。
実際の現場では、内装の撤去だけで終わるのか、躯体まで解体するのかで区分が変わります。判断に迷う工事は、契約前にご相談ください。
Q. 登録と許可、どちらを目指すべきですか。
当面500万円未満の工事だけを請け負う予定で、事業エリアも1つの県に収まるのであれば、登録から始めるのが現実的です。一方、元請から500万円以上の工事を打診されている、複数県で工事をする予定がある、といった場合は、はじめから建設業許可を目指すほうが無駄がありません。
Q. 登録から許可に切り替えるとき、実務経験は引き継げますか。
解体工事業登録の技術管理者としての経験と、建設業許可の営業所技術者等の実務経験は、それぞれ別の基準で判断されます。同じ工事の経験でも証明に使える書類が異なるため、早い段階で工事書類を整理しておくことをおすすめします。
Q. 登録の手続きにはどれくらいの期間がかかりますか。
標準的な処理期間は都道府県によって異なります。技術管理者の実務経験を証明する書類を集める時間も見込む必要があるため、元請から期限を切られている場合は早めに着手してください。
Q. 解体工事業登録があれば、建設リサイクル法の届出は不要になりますか。
別の手続きです。一定規模以上の解体工事などについては、工事に着手する7日前までに発注者から都道府県知事への届出が必要とされており(建設リサイクル法第10条)、これは解体工事業登録の有無とは関係なく求められます。元請業者には発注者への説明義務もあります。
Q. 家屋の解体を請け負う個人事業主でも登録は必要ですか。
必要です。法人・個人の別を問わず、解体工事業を営むのであれば登録の対象になります。個人事業主の建設業許可については個人事業主でも建設業許可は取れるで解説しています。
判断を誤りやすい3つの場面
実務でとくに間違いが起きやすいのが次の場面です。
1. 元請から追加工事を依頼され、合計で500万円を超えた
当初400万円で契約していた解体工事に追加が発生し、最終的に600万円になった、というケースです。建設業法では、正当な理由なく分割して契約した場合は合算して判定されるとされています。当初から500万円を超える見込みがあるなら、契約の時点で許可が必要かどうかを確認してください。
2. 「登録」を「許可」だと思い込んでいた
解体工事業登録の通知書を受け取ると、公的な手続きを終えた安心感から「これで解体の仕事は問題なく請けられる」と考えてしまいがちです。しかし登録で請け負えるのは軽微な建設工事の範囲にとどまります。元請から500万円以上の工事を打診されたときに初めて気づく、というのが典型的な流れです。
3. 県外の工事を請け負った
愛知県で登録を受けている業者が、そのまま岐阜県の現場を請け負ってしまうケースです。登録は工事を行う区域ごとに必要ですので、県をまたぐ場合は事前の確認が欠かせません。事業エリアの拡大を考えているのであれば、建設業許可のほうが管理はシンプルになります。
元請から許可の取得を求められている方へ
近年、コンプライアンスを重視する元請会社が増え、協力会社に対して建設業許可の取得を求めるケースが増えています。「登録はあるが許可はない」という状態では取引を継続できない、と言われて相談に来られる方も少なくありません。
このような場合、元請から取得の期限を示されていることが多く、要件を満たしているかの確認と書類収集を並行して進める必要があります。まずは現状で許可要件を満たせるかどうかの確認からお手伝いできます。
解体工事の場合、営業所技術者等の要件を実務経験で証明しようとすると、10年分の工事書類を集めることになり、ここで時間がかかります。1級土木施工管理技士などの資格をお持ちの方が社内にいれば大幅に短縮できますので、まずは在籍している方の資格を洗い出すところから始めるのが近道です。
依頼した場合の費用は建設業許可を行政書士に頼む費用と選び方で解説しています。
まとめ
- 解体工事の手続きには、建設リサイクル法の解体工事業登録と、建設業法の解体工事業許可の2つがあります
- 分かれ目は金額です。500万円未満なら登録、500万円以上なら建設業許可が必要です
- 土木工事業・建築工事業・解体工事業のいずれかの建設業許可があれば、登録は不要です(許可取得により登録は失効します)
- 登録は工事をする都道府県ごとに必要で、有効期間は5年です
- 登録には技術管理者の選任が必須で、選任しないと20万円以下の罰金、無登録営業には1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金が定められています
- とび・土工工事業の許可で解体工事を施工できた経過措置は終了しています
愛知建設業許可サポートオフィス|やまじ行政書士事務所が選ばれる理由
- 解体工事業登録と建設業許可のどちらが必要か、請け負う工事の内容から判断してご案内します
- 元請から取得を求められている場合も、要件の確認と書類集めを並行して進めます
- 愛知・岐阜・三重の複数県で工事をされる場合の手続きもまとめて対応します
登録で足りるのか許可が必要なのか、迷った時点でご相談ください。契約前の確認が最も確実です。
やまじ行政書士事務所
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