個人事業主でも建設業許可は取れる!要件・経営経験の証明・法人成りの注意点

「個人事業主のままでは建設業許可は取れない、と言われた」

「一人親方だけど、元請から許可を取るように求められている」

「法人にしてからでないと申請できないのだろうか」

こうした誤解やお悩みを、個人事業主の方から本当によくお聞きします。先に結論をお伝えすると、個人事業主のままでも建設業許可は取れます。この記事では、個人事業主が許可を取るための要件、審査で一番のハードルになる経営経験の証明、そして法人化(法人成り)を考えている場合の注意点を、行政書士の実務目線で解説します。

結論:個人事業主でも、一人親方でも、要件を満たせば許可は取れる

まず、よくある誤解から解いていきます。

  • 「個人事業主では許可を取れない」は誤解です。建設業許可の要件は法人・個人共通で、個人事業主だから取れないという制度上の区別はありません。異なるのは提出書類の一部だけです(詳しくは後述の比較表をご覧ください)。
  • 従業員のいない一人親方でも取得できます。経営業務の管理責任者と営業所技術者等(従来の専任技術者)は、要件を満たせば同一営業所内で1人が兼ねることが認められています。自分1人で両方の要件を満たせるなら、そのまま申請できます。
  • ただし、「個人事業主で取った許可を、法人成りのときにそのまま引き継げる」は誤解です。引き継ぎには事前の認可手続きが必要で、タイミングを誤ると許可が途切れます。近々法人化する予定があるなら、最初から法人で取る方がよい場合もあります(詳しくは後述します)。

個人事業主が建設業許可を取るための要件

要件そのものは法人と共通です。個人事業主の場合の当てはめ方を整理します。

  • 経営業務の管理責任者がいること:個人事業主として建設業を営んだ経験(請負工事の経験)が5年以上あれば、ご自身がこれに該当します。個人事業主になる前に、建設業を営む会社で役員を務めた経験があれば、その期間も通算できます。常勤であることが必要です。
  • 営業所技術者等がいること:施工管理技士などの資格、または一定年数の実務経験を持つ人が営業所に常勤でいることが必要です。一人親方の場合、ご自身が資格または実務経験の要件を満たしていれば、経営業務の管理責任者との兼務ができます。
  • 財産的基礎があること:まず直前の決算で、自己資本が500万円以上あるかを確認します(個人事業主の場合、青色申告決算書の貸借対照表から確認します)。自己資本が500万円未満の場合は、500万円以上の資金調達能力があること(銀行預金残高証明書などで証明)を確認する流れになります。
  • 社会保険の加入状況:事業形態に応じて加入すべき保険に加入していることが確認されます。
  • 欠格要件に該当しないこと・誠実性があること:こちらも法人と共通です。

要件の全体像は建設業許可申請の4つの要件とは?で詳しく解説しています。

「常勤」の扱いはどうなる?

この記事で繰り返し出てくる「常勤」は、あくまで満たすべき前提条件です。ただし愛知県の場合、個人事業主本人が経営業務の管理責任者や営業所技術者等を務めるときは、常勤性の確認資料の提出は必要ありません(常勤であること自体は必要です)。なお、事業主本人以外で経営業務の管理責任者になれるのは、商業登記簿に登記された支配人です。支配人を置く場合や、事業主本人以外の方が営業所技術者等を務める場合には、その方の常勤性を確認できる資料が必要になります。

個人事業主と法人で違うのは「書類の一部」だけ

必要書類の違いを整理します。「個人は住民票だけで済む」わけではない点に注意してください。

書類 法人 個人事業主
登記事項証明書(履歴事項全部証明書) 必要 不要(住民票などで確認)
定款 必要 不要
登記されていないことの証明書 役員等について必要 本人についても必要
身分証明書(本籍地の市区町村発行) 役員等について必要 本人についても必要
財務諸表 法人用の様式 個人用の様式(貸借対照表・損益計算書)

登記されていないことの証明書と身分証明書は、法人・個人共通で必要です。また財務諸表は、個人事業主には個人用の様式が用意されており、確定申告書の内容をもとに作成します。

最大のハードルは「経営経験5年」の証明

個人事業主の許可申請で特につまずきやすいのが、経営業務の管理責任者としての経営経験の証明です。愛知県の場合、証明の土台になるのは次の2種類の書類です。

証明に使う書類

  1. 確定申告書の控え一式:第一表・第二表に、収支内訳書(白色申告)または青色申告決算書を加えた一式と、所得証明書を必要年数分(5年分)用意します
  2. 各年の工事実績を示す書類:年ごとに、工事請負契約書か、注文書とそれに対応する請書控、あるいは注文書・請書控・請求書のいずれかに通帳・預金取引明細票などの入金記録を組み合わせて、請負工事の実績を示します

毎年きちんと確定申告をして、工事の書類を年ごとに保存してきた方なら、証明の道筋は立てられます。逆に、申告をしていない年があったり、書類を処分してしまっていたりすると、実際に5年以上経営していても証明ができず、許可が取れないことがあります。

注意:「請負工事」の経営経験であることが必要

ここが実務で特につまずきやすいポイントです。建設業の経営経験は、建設工事の完成を請け負った経験である必要があります。愛知県の手引きにも、いわゆる「人工出し」や「応援」などの常用工事、建設資材の販売の実績は、建設業の経営経験にはならないことが明記されています。

書面のうえで請負工事だと確認できることも必要です。請求書に人工代しか計上されていない場合(常用工事の実績に見える場合)や、資材代のみで工賃の表示がない場合は、それだけでは請負工事の実績と認められません。5年分の売上があっても、その中身が常用中心だと証明に使えないことがあるため、早めに書類の中身を確認することをおすすめします。

補佐経験による証明という道もある

ご自身の個人事業主としての経験が5年に満たなくても、経営業務の管理責任者に準ずる地位で、経営業務を補佐した経験が6年以上あれば、要件を満たせる場合があります。たとえば、父親が個人事業主として営む建設業を、息子である自分が長年実質的に切り盛りしてきた、といったケースです。

この6年の経験は、法人・個人事業のどちらの経験でも、両方の通算でも認められます。法人での役員経験があれば、その期間も通算に含められます。ただし、単に従業員として働いていた期間は対象になりません。

ただし、この証明は簡単ではありません。経営業務を補佐した経験の証明書(建設業許可を持つ第三者からの証明が必要です)や組織図、確定申告書、所得証明書など複数の書類が求められ、事前の相談が必要になります。該当しそうな方は準ずる地位とは?建設業許可を取得するための要件と証明方法も参考にしたうえで、行政書士か県の窓口に早めに相談してください。

営業所技術者等の証明も忘れずに

経営経験と並ぶもう1つの柱が、営業所技術者等の要件の証明です。資格で満たす場合は資格者証の写しなどで証明できます。実務経験で満たす場合は実務経験証明書の作成が必要になり、経験の内容を裏付ける資料の提出や提示を求められることがあります。経営経験の証明と並行して、こちらの準備も早めに進めてください。

法人成りを考えているなら:許可は「そのまま」は引き継げない

個人事業主で許可を取ったあと、事業の成長にあわせて法人化を考える方は多くいます。ここで重要な注意点があります。

引き継ぎには「事業承継の認可」という事前手続きが必要

個人事業主の許可を新しく設立した法人へ引き継ぐには、事業承継の認可(建設業法第17条の2)という手続きが必要です。ポイントは次のとおりです。

  • 承継の効力発生日より前に、認可を受けておく必要があります。効力発生日とは、事業譲渡契約で定めた「事業が個人から法人へ移る日」のことです(申請日ではなく、認可を受ける日が効力発生日前である必要があります)
  • 認可申請の時点で、法人を設立したうえで、個人事業主と設立法人との間で事業譲渡契約を締結している必要があります
  • 愛知県では、承継の効力発生日の遅くとも1か月前までに申請書を受け付ける必要があり、事前相談は効力発生日の2か月前が推奨されています
  • 認可の手数料はかかりません
  • 認可を受けて承継した場合、許可の有効期間は事業承継の効力発生日から5年後の対応する日までとなり、法人として新しい5年が始まります

つまり「法人を作ってから、あとで許可を移せばいい」という感覚で進めると、認可が間に合わず、法人側が無許可の期間を抱えるおそれがあります。法人成りを決めたら、登記や契約より先に、まず承継のスケジュールを組むことが大切です。

もう1つの方法:個人の許可を廃業して、法人で新規に取り直す

事業承継の認可を使わず、個人事業の許可をいったん廃業し、設立した法人であらためて新規申請するという方法もあります。手続きの段取りはシンプルになりますが、法人の許可が下りるまでの間、法人として無許可の期間が生じるのが大きなデメリットです。その間は軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負えません。無許可の期間を作らずに引き継ぎたい場合は、事業承継の認可を検討してください。

近々法人化するなら、最初から法人で取る選択も

これから許可を取る段階で、近い将来の法人化がすでに視野に入っているなら、最初から法人を設立して法人として許可を取る方が、承継手続きの手間がなく、時間的にも費用的にも合理的な場合があります。

  • 個人で取ってすぐ法人成りすると、承継認可の準備・スケジュール管理が追加で発生します
  • 一方、法人化の予定が当面ないなら、個人事業主のまま取得して問題ありません

「いつ法人化するか」がこの判断の分かれ目です。迷う場合は、事業の見通しを整理したうえで専門家に相談することをおすすめします。

個人事業主ならではの備え:もしもの時の「相続」の認可

個人事業主の許可には、法人にはない論点がもう1つあります。事業主本人に万一のことがあった場合、許可は当然には家族に引き継がれません。

後継者(相続人)が許可を引き継ぐには、被相続人の死亡後30日以内に相続の認可を申請する必要があります(建設業法第17条の3)。期限内に認可申請をすれば、認可を受けるまでの間は、被相続人が受けていた許可が相続人に対するものとみなされ、営業を続けられます。認可後の許可の有効期間は、死亡日から5年後の対応する日までです。

30日という期限は、葬儀や各種手続きに追われる中ではあっという間です。家族で事業を営んでいる方は、「もしもの時は30日以内に建設業許可の相続認可」ということだけでも、後継者と共有しておくことをおすすめします。

許可を取ったあとの毎年の義務も知っておく

許可は取って終わりではありません。個人事業主も法人と同じく、毎事業年度の終了後4か月以内に事業年度終了届(決算変更届)を提出する義務があります。個人事業主の場合は、確定申告書の内容をもとに個人用の様式で財務諸表を作成して提出します。

この届出は更新時の審査でも確認されるため、毎年の確定申告とセットで「申告が終わったら事業年度終了届(決算変更届)」という習慣にしておくと、5年後の更新がスムーズです。

なお、許可の更新は個人事業主のままでも法人と同じく5年ごとです。更新期限の管理と期限が迫った場合の対処は建設業許可の更新期限が迫ったら?30日前ルールと期限切れの対処法で解説しています。

よくある質問

Q. 個人事業主のままでは建設業許可を取れないと聞きましたが、本当ですか。

いいえ、誤解です。許可の要件は法人・個人共通で、個人事業主のままでも要件を満たせば取得できます。提出書類が一部異なるだけです。

Q. 従業員のいない一人親方でも取れますか。

取れます。経営業務の管理責任者と営業所技術者等は同一営業所内での兼務が可能なため、ご自身が経営経験と資格(または実務経験)の両方の要件を満たしていれば申請できます。

Q. 5年分の売上はありますが、応援(常用)の仕事が中心でした。経営経験になりますか。

注意が必要です。経営経験は請負工事の経験である必要があり、人工出しや応援などの常用工事の実績は経営経験と認められません。書類の中身によって判断が分かれるため、確定申告書と工事書類を揃えて早めに専門家に相談してください。

Q. 父の建設業を長年手伝ってきました。自分の経営経験として使えますか。

経営業務の管理責任者に準ずる地位での補佐経験が6年以上あれば、認められる余地があります。法人・個人どちらの経験でも、通算でも構いません。ただし証明のハードルは高く、建設業許可を持つ第三者からの証明書など複数の書類が必要です。事前の相談をおすすめします。

Q. 法人成りしたら、個人で取った許可はどうなりますか。

自動では引き継がれません。事業承継の認可(建設業法第17条の2)を、承継の効力発生日前に受けておく必要があります。手続きのタイミングを誤ると許可が途切れるため、法人化を決めたら早めに準備してください。

Q. どのくらいの期間で取れますか。

書類の準備を含めて2〜3か月程度が目安です。個人事業主の場合、経営経験の証明書類(確定申告書・工事書類)を5年分揃える作業に時間がかかるケースが多いため、早めに準備を始めることをおすすめします。

Q. 費用はどのくらいかかりますか。

新規申請の法定費用は9万円(知事許可)で、行政書士に依頼する場合の報酬相場は10万〜20万円です。費用の全体像は建設業許可の費用まとめ|申請・更新・代行の相場で解説しています。

まとめ

  • 個人事業主のままでも、一人親方でも、要件を満たせば建設業許可は取れます。「法人でないと取れない」は誤解です。
  • 審査の柱は、経営経験5年の証明と営業所技術者等の要件の証明の2つ。経営経験は確定申告書(収支内訳書・青色申告決算書を含む)と工事書類が土台になり、請負工事の経験であることが必要です(人工出し・応援などの常用はNG)。
  • 個人事業主としての経営経験が足りなくても、補佐経験6年以上という道もあります(法人・個人の経験の通算可。証明は簡単ではないため早めに相談を)。
  • 法人成りで許可を引き継ぐには事業承継の認可を効力発生日前に受ける必要があります。近々法人化するなら、最初から法人で取る方がよい場合もあります。
  • 個人事業主特有の備えとして、相続の認可(死亡後30日以内)と、毎年の事業年度終了届(決算変更届)も覚えておいてください。

ポイント:個人事業主の許可申請は、要件を満たしていることが前提です。そのうえで、満たしていることを書類で証明できるかが結果を左右します。確定申告書と工事書類の状態を確認するところから始めてください。将来の法人化まで見据えたご相談なら、取得のタイミングから一緒に設計できます。

あわせて読みたい関連記事

愛知建設業許可サポートオフィス|やまじ行政書士事務所が選ばれる理由

  • 個人事業主・一人親方の許可申請に、経営経験の証明書類の確認から一括して対応する
  • 応援・常用と請負が混在した実績でも、どの年のどの工事が請負工事として証明に使えるかを、書類の事実に基づいて正確に仕分けする
  • 法人成りの予定がある方には、事業承継の認可まで見据えた取得プランを提案する

「自分の場合は取れるのか」を確認したい方は、確定申告書と工事書類の状況をお聞かせください。現状の整理から一緒に始めましょう。

やまじ行政書士事務所
TEL:052-957-3545
AM:7:00-PM10:00(平日土日対応)