建設業許可を取ったあと、毎年必ず必要になる手続きがあります。それが事業年度終了届(決算変更届)です。
許可は一度取れば5年間有効ですが、その5年の間、毎年欠かさず提出しなければならない届出があることは、意外と知られていません。「更新のときにまとめて出せばいい」と考えていて、更新の直前に何年分もの書類作成に追われる方は少なくありません。
この記事では、事業年度終了届(決算変更届)の提出期限と必要書類を条文にもとづいて整理し、提出しなかった場合に実際どうなるのかまで解説します。
結論:毎事業年度が終わってから4か月以内。出さないと罰則もある
- 提出期限は毎事業年度経過後4か月以内です(建設業法第11条第2項)。法人は決算日の4か月後、個人事業主は毎年4月30日が目安になります
- 提出しなかった場合、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象と定められています(同法第50条第1項第2号)
- 罰則以上に現実的な問題として、未提出のままでは許可の更新申請ができません。5年分をまとめて作ることになり、費用も手間も大きくなります
- 公共工事を受注するための経営事項審査も、この届出を出していることが前提になります
事業年度終了届(決算変更届)とは
事業年度終了届(決算変更届)とは、建設業許可を受けた事業者が、1年間の工事実績と決算内容を許可行政庁に報告する届出です。建設業法第11条第2項に「毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない」と定められた法律上の義務です。
呼び方が事務所や自治体によって分かれるため混乱しやすいのですが、「事業年度終了届」「決算変更届」「決算報告」はいずれも同じ手続きを指します。
なぜ毎年報告が必要なのか
「赤字だと許可が危ないのでは」と心配される方がいますが、そうではありません。事業年度終了届(決算変更届)を出す意味は、主に次の2つです。
1つ目は、提出した書類が公衆の閲覧に供されるためです。
建設業法第13条は、許可行政庁に対して「公衆の閲覧に供する閲覧所を設けなければならない」と定めており、その対象に事業年度終了届で提出した工事経歴書と直前3年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面が明記されています(同条第4号)。
つまりこの届出は、行政に向けた報告であると同時に、発注者や取引先が業者を選ぶときの判断材料を公開する制度でもあります。毎年きちんと出していれば、直近の施工実績が公開情報として残ります。
2つ目は、経営事項審査(経審)の基礎資料になるためです。
公共工事を受注するには経審が必要で、経審は事業年度終了届の提出を前提に、そこで提出した工事経歴書と財務諸表をもとに評点が算出されます。公共工事を目指す事業者にとっては、毎年の届出がそのまま評価の土台になります。
なお、赤字であることや施工する工事の中身が変わったことを理由に、許可の要件を満たさなくなるわけではありません。この届出は要件の再審査ではなく、実績と決算内容の報告です。
30日以内の「変更届」とは別のもの
紛らわしいのですが、建設業法には期限の異なる届出が並んでいます。混同して期限を過ぎてしまう例が多いため、整理しておきます。
許可を受けたあとの主な届出は、根拠条文ごとに期限が分かれています。
| 届出の内容 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 商号・名称、営業所の名称や所在地、資本金額、役員等の氏名、営業所技術者等の氏名の変更 | 30日以内 | 建設業法第11条第1項(同法第5条第1号〜第5号の記載事項) |
| 事業年度終了届(決算変更届) | 毎事業年度経過後4か月以内 | 同条第2項 |
| 使用人数、定款の記載事項の変更 | 毎事業年度経過後4か月以内 | 同条第3項、施行規則第10条第2項 |
| 新たに令第3条に規定する使用人になった者があるとき | 2週間以内 | 施行規則第8条 |
| 営業所技術者等が営業所に置かれなくなり、代わりの人を置くとき | 2週間以内 | 建設業法第11条第4項 |
| 経営業務の管理責任者や営業所技術者等の要件を満たさなくなったとき、欠格要件に該当したとき | 2週間以内 | 同条第5項 |
| 健康保険等の加入状況(様式第7号の3)の記載事項の変更 | 2週間以内(従業員数のみの変更は毎事業年度経過後4か月以内) | 施行規則第7条の2第3項 |
| 廃業 | 30日以内 | 建設業法第12条 |
なお、令第3条に規定する使用人(支店長や営業所の代表者)に新しくその立場になった人がいるときは、事業年度終了届を待たず2週間以内の届出が必要です(施行規則第8条)。
なお、支配人の氏名は法第5条第4号に掲げられているため、個人事業主が支配人を変更した場合は30日以内の届出になります。
提出期限の数え方
法人の場合
決算日の翌日から4か月以内です。具体的には次のようになります。
- 3月31日決算の会社:7月31日まで
- 9月30日決算の会社:翌年1月31日まで
- 12月31日決算の会社:翌年4月30日まで
個人事業主の場合
個人事業主の事業年度は1月1日から12月31日と決まっているため、期限は毎年4月30日です。所得税の確定申告(3月15日期限)が終わってから約1か月半、という位置づけになります。
確定申告の資料をそのまま使えるわけではない点に注意が必要です(後述します)。
期限を1日でも過ぎたら
期限が土日祝日にあたる場合の取扱いは許可行政庁によって異なるため、余裕をもって提出してください。なお期限を過ぎても届出そのものは受け付けてもらえますが、遅れた事実は記録に残ります。
必要書類
提出する書類は、建設業法第6条第1項第1号・第2号と、建設業法施行規則第10条に定められています。法人か個人か、知事許可か大臣許可かで内容が変わります。
全員に必要な書類
| 書類 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 表紙 | 各許可行政庁が定めた表紙が必要です(愛知県では電子申請の場合も必ず添付します) | 許可行政庁が定める様式 |
| 工事経歴書 | その事業年度に施工した工事の一覧。建設業の種類(業種)ごとに作成する | 建設業法第6条第1項第1号 |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額を記載した書面 | 直近3期分の施工金額を業種別・元請下請別に記載する | 同項第2号 |
法人に必要な財務諸表
建設業法施行規則第10条第1項第1号により、次の書類が必要です。
- 株式会社以外の法人・小会社(資本金1億円以下かつ負債合計200億円未満の株式会社):貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表(小会社はこれらに事業報告書が加わります)
- 株式会社(小会社を除く):上記に附属明細表と事業報告書が加わります
個人事業主に必要な財務諸表
貸借対照表と損益計算書です(施行規則第10条第1項第2号)。
納税証明書
許可の区分によって、必要な税目が変わります(施行規則第10条第1項第3号・第4号)。
- 知事許可:事業税の納付すべき額及び納付済額を証する書面(都道府県税事務所で取得)
- 大臣許可:法人税(個人事業主は所得税)の納付すべき額及び納付済額を証する書面(税務署で取得)
変更があった場合に一緒に出す書類
次の書類は、記載事項に変更があったときに事業年度終了届とあわせて提出します(建設業法第11条第3項、施行規則第10条第2項)。
- 使用人数(様式第4号)
- 定款又は議事録
- 健康保険等の加入状況(様式第7号の3。ただし従業員数のみの変更の場合です。加入状況そのものが変わったときは2週間以内の届出が必要になります。施行規則第7条の2第3項)
なお、新たに令第3条に規定する使用人(支店や営業所の代表者)になった人がいる場合は、事業年度終了届とは別に2週間以内の届出が必要です(施行規則第8条)。
提出先と提出方法(愛知県の場合)
愛知県知事許可の場合、提出先は主たる営業所の所在地によって変わります。
- 名古屋市の区域:愛知県都市・交通局都市基盤部都市総務課建設業・不動産業室(県庁)
- 名古屋市以外:管轄の建設事務所(尾張・一宮・海部・知多・西三河・知立・豊田加茂・新城設楽・東三河の各建設事務所)
たとえば岡崎市・西尾市・額田郡なら西三河建設事務所、豊田市・みよし市なら豊田加茂建設事務所が窓口です。ご自身の管轄は愛知県の手引きで確認してください。
提出部数は正本1部と副本1部の計2部です(副本は写しで構いません)。
なお愛知県では事業年度終了届の対面審査を行っていません。郵送、投函、または窓口での仮受付(預かり)で受け付ける運用です。不備があれば後日連絡が来る形になるため、期限ぎりぎりの提出は避け、期限の2週間ほど前を目標に準備するのが安全です。
電子申請にも対応しています。建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)を使えば、窓口へ出向かずに届出ができます。
大臣許可の場合は、主たる営業所を管轄する地方整備局が提出先です(愛知県内であれば中部地方整備局)。
工事経歴書を書くときのポイント
必要書類の中で、財務諸表と並んで手が止まりやすいのが工事経歴書です。
- 業種ごとに1枚ずつ作成します。3業種の許可を持っているなら、原則として3種類の工事経歴書が必要です
- 記載する工事は、その事業年度に完成した工事が基本になります。期をまたぐ工事の扱いは許可行政庁の手引きで確認してください
- 元請工事と下請工事を区別して記載します。経営事項審査を受ける場合、この区分が評点に影響します
- 軽微な建設工事(請負代金500万円未満など)も含めて記載するのが原則です。「許可が必要な規模の工事だけ書けばよい」という誤解が多い部分です
- 記載順や記載件数の基準は、経審を受けるかどうかで変わります。経審を受ける予定がある場合は、あらかじめ確認しておくと二度手間を防げます
普段から工事台帳や請求書を業種別・元請下請別に整理しておくと、この作業が大幅に楽になります。決算のたびに一から集計している場合は、記録の取り方を見直す価値があります。
建設業許可を維持するための年間スケジュール
事業年度終了届(決算変更届)は、単体で覚えるより1年の流れの中で位置づけたほうが漏れにくくなります。3月決算の法人を例にすると、次のような流れです。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3月31日 | 決算日 |
| 4〜5月 | 税理士と決算作業。並行して工事経歴書の集計を始める |
| 5月末(法人税の申告期限) | 決算確定 |
| 6月〜7月中旬 | 財務諸表を建設業法の様式に組み替え、届出書類を作成 |
| 7月31日 | 事業年度終了届(決算変更届)の提出期限 |
| 経審を受ける場合 | 事業年度終了届の提出後に経営事項審査を申請 |
| 許可満了の30日前まで | 5年に1度、更新申請 |
この流れができていれば、更新の年も慌てずに済みます。逆に毎年の届出が滞ると、更新の年にすべてのしわ寄せが来ます。
つまずきやすいポイント
税務署に出した決算書をそのまま使えない
もっとも手間がかかるのがここです。建設業法の財務諸表は建設業法独自の様式で、勘定科目の分類も税務申告用の決算書とは異なります。
たとえば売上高は「完成工事高」と「兼業事業売上高」に分ける必要があり、原価も「完成工事原価」と「兼業事業売上原価」に分けます。売掛金は「完成工事未収入金」、買掛金は「工事未払金」といった具合に、建設業特有の科目に組み替えなければなりません。
顧問税理士が作成した決算書を持ち込めばそのまま受け付けてもらえる、というものではない点は、あらかじめ知っておいてください。
税込・税抜は決算書の処理に合わせる
金額を税込で書くか税抜で書くかは、税理士が作成した決算書の消費税の処理方法に合わせるのが実務です。工事経歴書の様式にも「税込・税抜」を選択する欄が設けられています。
ただし、経営事項審査を受審する場合は税抜で作成します(課税事業者の場合)。公共工事への参入を考えているなら、この点を意識して普段から経理の方針を決めておくとよいでしょう。
工事の実績がない年も提出が必要
その事業年度に1件も工事を請けていない場合でも、届出は必要です。工事経歴書は「実績なし」として作成します。「工事がなかったから出さなくてよい」という誤解は多いのですが、法第11条第2項の義務は実績の有無で変わりません。
決算が確定していない場合
4か月の期限は決算の確定を待ってくれません。決算作業が遅れている場合は、税理士と並行して準備を進める必要があります。
提出しなかったらどうなるか
罰則の対象になる
建設業法第50条第1項第2号は、第11条第1項から第4項までの書類を提出しなかった場合、または虚偽の記載をして提出した場合について、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金と定めています。
実務上、1年遅れただけで直ちに刑事罰が科されるケースは多くありませんが、法律上の罰則規定があることは押さえておいてください。
監督処分(指示処分・営業停止)の対象になり得る
建設業法第28条第1項は、許可業者が建設業法の規定に違反した場合、許可行政庁が必要な指示をすることができると定めています。事業年度終了届(決算変更届)の未提出もこの対象になり得ます。
さらに、その指示に従わないときは、1年以内の期間を定めて営業の全部又は一部の停止を命じることができるとされています(同条第3項)。
許可の更新ができない
実務上もっとも影響が大きいのがこれです。更新申請の際には、5年分の事業年度終了届(決算変更届)がすべて提出済みであることが前提になります。未提出の年度があれば、まずその分をすべて提出してからでなければ更新の手続きが進みません。
更新期限が迫ってから5年分の財務諸表を組み替える作業は、費用も時間も大きな負担になります。最悪の場合、更新期限に間に合わず許可が失効します。失効すれば新規申請からやり直しとなり、その間は軽微な建設工事しか請けられなくなります。
経営事項審査を受けられない
公共工事の入札に参加するには経営事項審査(経審)が必要ですが、経審の申請は事業年度終了届(決算変更届)の提出が前提です。未提出のままでは経審を受けられず、公共工事の入札参加資格を維持できません。
業種追加などの申請も進まない
新しい業種を追加したい、一般建設業から特定建設業に変えたいといった申請も、過年度の届出が未提出だと受け付けてもらえないのが通常です。事業を広げたいタイミングで足止めされることになります。
よくある質問
Q. 何年も提出していません。どうすればよいですか。
未提出は建設業法違反の状態であり、放置してよいものではありません。ただし気づいた時点で是正することはできますので、すぐに着手してください。
手順としては、未提出の年度を古い順にすべて作成し、まとめて提出します。過去の決算書類・工事の記録・納税証明書を集める必要があり、年数が増えるほど費用も時間もかかります。更新期限が迫っている場合は、更新申請そのものが進められなくなるため、最優先で取り組む必要があります。
なお「まとめて出せばよい」という話ではありません。是正のあとは、翌年から期限内の提出を続けてください。
Q. 自分で作成できますか。
作成自体は可能です。ただし建設業法独自の様式への組み替えが必要なため、簿記の知識がないと難しく感じる方が多い部分です。1期分を自分で作ってみて、負担が大きいと感じたら専門家に相談するという進め方もあります。
Q. 顧問税理士に頼めますか。
決算書の作成は税理士の業務ですが、建設業許可の届出書類の作成・提出代行は行政書士の業務です。税理士が作成した決算書をもとに、行政書士が建設業法の様式に組み替えて提出する、という役割分担が一般的です。
Q. 提出に手数料はかかりますか。
事業年度終了届(決算変更届)は届出であり、新規申請や更新申請のような許可手数料はかかりません。行政書士に依頼する場合の報酬は別途必要です。
Q. 決算日を変更した場合はどうなりますか。
事業年度が変われば、変更後の事業年度終了日から起算して4か月以内が期限になります。あわせて定款変更の届出が必要になる場合もあります。
Q. 赤字決算だと許可に影響しますか。
事業年度終了届(決算変更届)は実績と決算内容の報告であり、赤字であることを理由に受理されない、許可が取り消されるといったことはありません。一般建設業の許可の更新にあたって、財務諸表によって財産的基礎を改めて審査されることもありません。
ただし、公共工事を目指して経営事項審査を受ける場合は、提出した財務諸表の内容がそのまま評点に反映されます。この意味では、決算の内容は無関係ではありません。
Q. 許可を取ったばかりですが、初年度から必要ですか。
必要です。許可を受けた事業年度の分から提出義務が生じます。「まだ1年経っていないから」と考えて初年度を飛ばしてしまう例があるため、注意してください。
Q. 廃業する予定でも提出が必要ですか。
許可を維持している間は届出義務があります。事業をやめる場合は廃業届を提出することになりますので、そのタイミングと合わせて許可行政庁に確認してください。
依頼した場合の費用の目安
行政書士に事業年度終了届(決算変更届)を依頼した場合の報酬は、2万円〜4万円程度が一つの目安です。業種数や工事件数、決算内容によって変わります。
未提出の年度が複数ある場合は年度ごとに費用がかかります。毎年期限内に提出しておくことが、費用の面でもいちばん負担の少ない進め方です。費用の全体像は建設業許可の費用まとめで解説しています。
まとめ
- 事業年度終了届(決算変更届)は、毎事業年度経過後4か月以内に提出する法律上の義務です(建設業法第11条第2項)
- 必要書類は工事経歴書、直前3年の工事施工金額を記載した書面、財務諸表、納税証明書などで、法人・個人、知事許可・大臣許可で内容が変わります
- 財務諸表は建設業法独自の様式への組み替えが必要で、税務署に提出した決算書をそのまま使うことはできません
- 未提出のままだと罰則の対象になるだけでなく、更新ができない・経審を受けられない・業種追加もできないという実害が出ます
- 未提出は法律違反の状態です。溜まってしまっている場合は、気づいた時点ですぐに是正に着手し、そのうえで翌年からは期限内の提出を続けてください
愛知建設業許可サポートオフィス|やまじ行政書士事務所が選ばれる理由
- 毎年の事業年度終了届(決算変更届)を、決算書から建設業法の様式へ正確に組み替えます
- やむを得ず未提出の年度が溜まってしまった場合も、更新期限から逆算して提出の順序を整理します
- 更新・経営事項審査まで見据えて、許可を維持するための年間スケジュールをご提案します
毎年の届出は、後回しにするほど負担が増えます。今期の分から一緒に整えていきましょう。
やまじ行政書士事務所
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