建設業許可の要件というと、経営業務の管理責任者や営業所技術者等、財産的基礎の3つが語られがちです。しかし実務でつまずくのは、むしろ残りの2つ、誠実性と欠格要件であることが少なくありません。
経営経験も技術者も揃っているのに、役員の1人が過去の事情で欠格要件に該当していて許可が下りない。このケースは実際に起こります。しかも欠格要件は本人が「該当している」と気づいていないことが多く、申請してから発覚します。
この記事では、誠実性と欠格要件について、建設業法の条文と国土交通省の許可事務ガイドラインをもとに整理します。
結論:この2つは「持っているか」ではなく「該当しないか」の要件
- 誠実性と欠格要件は、経営経験や資格のように積み上げて満たす要件ではありません。「マイナス事由に該当していないこと」を確認される要件です
- 誠実性は建設業法第7条第3号、欠格要件は同法第8条に定められています
- 対象は申請者本人だけではありません。法人なら非常勤を含む役員全員と、支配人・営業所の代表者まで含まれます
- 欠格要件は全部で14項目あり、更新のときは第1号と第7号から第14号までが対象になります(第8条柱書)
- 申請書や添付書類に重要な事項の虚偽記載があれば、それ自体が許可しない理由になります
誠実性とは(建設業法第7条第3号)
建設業法第7条第3号は、許可の基準としてこう定めています。
法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
「不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」という書き方に注目してください。過去に何かをしたかどうかだけでなく、これから不正な行為をするおそれが明らかかどうかという視点で判断される要件です。
「不正な行為」と「不誠実な行為」の意味
抽象的な言葉ですが、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインが定義を示しています。
| 用語 | ガイドラインの定義 |
|---|---|
| 不正な行為 | 請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為 |
| 不誠実な行為 | 工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為 |
つまり「不正な行為」は詐欺・脅迫・横領など法律に違反する行為、「不誠実な行為」は契約違反にあたる行為、と整理できます。工期を守らない、約束した工事内容を勝手に変えるといった行為が後者にあたります。
誰が対象になるのか
ここが見落とされやすいところです。ガイドラインでは、法人の場合の対象を「その非常勤役員を含む役員及び一定の使用人」としています。
「一定の使用人」とは、建設業法施行令第3条に定められた支配人、および支店や常時建設工事の請負契約を締結する営業所の代表者(支配人である者を除く)を指します。
つまり、次の人たち全員が確認の対象です。
- 法人そのもの
- 非常勤役員を含む、すべての役員
- 支配人(商業登記簿に登記された支配人)
- 支店・営業所の代表者
個人事業主の場合は、事業主本人と上記の使用人が対象になります。
具体的に誠実性が否定される場合
ガイドラインは、次のいずれかに該当する場合、原則としてこの基準を満たさないものとして扱うとしています。
- 建築士法、宅地建物取引業法などの規定により、不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過しない者
- 暴力団の構成員である者
- 暴力団による実質的な経営上の支配を受けている者
ここでいう「暴力団」は、指定暴力団かどうかを問いません。
ただし、上記の2と3にあたる暴力団関係については、誠実性の問題にとどまりません。建設業法第8条第9号(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)および第14号(暴力団員等がその事業活動を支配する者)として、欠格要件にも定められています。欠格要件に該当する場合は、そもそも許可を受けることができません。
すでに許可を持っている場合の扱い
ガイドラインには、実務上重要な取扱いが定められています。
許可を受けて継続して建設業を営んでいた者については、(1)に該当する行為をした事実が確知された場合又は(2)のいずれかに該当する者である場合を除き、この基準を満たすものとして取り扱うものとする。
つまり、すでに建設業許可を受けて継続して営業してきた事業者については、問題となる事実が確認されない限り、誠実性の要件を満たすものとして扱われます。更新のたびに誠実性を一から証明し直す必要はありません。
誠実性は書類で証明するものではない
誠実性は、経営業務の管理責任者や財産的基礎のように「証明書を提出して立証する」性質の要件ではありません。申請書に添付する書類のうち、誓約書(様式第6号)は建設業法第8条各号の欠格要件に該当しないことを誓約するものであり(同法第6条第1項第4号)、身分証明書や登記されていないことの証明書も、主として欠格要件の確認のために提出する書類です。
つまり、誠実性そのものを証明する書類は存在しません。許可行政庁が処分情報などを確認し、「不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者」にあたる事実が確認されない限り、この基準を満たすものとして扱われます。すでに許可を受けて継続して営業してきた事業者については、そうした事実が確知されない限り基準を満たすものとして扱う、という運用がガイドラインに示されています。
欠格要件とは(建設業法第8条)
欠格要件は、これに該当すると許可を受けられないという事由です。建設業法第8条に14項目が列挙されています。
条文は「次の各号のいずれか(許可の更新を受けようとする者にあつては、第一号又は第七号から第十四号までのいずれか)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない」と定めています。
14項目の内容
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 1号 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 |
| 2号 | 不正の手段による許可取得などで許可を取り消され、取消しの日から5年を経過しない者 |
| 3号 | 取消処分の通知後に廃業の届出をした者で、届出から5年を経過しない者 |
| 4号 | 3号の届出をした法人の、通知の日前60日以内の役員等・使用人で、届出から5年を経過しない者 |
| 5号 | 営業停止を命じられ、その期間が経過しない者 |
| 6号 | 営業を禁止され、その期間が経過しない者 |
| 7号 | 拘禁刑以上の刑に処せられ、刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者 |
| 8号 | 建設業法など一定の法令違反、暴力団対策法違反、刑法の傷害・暴行・脅迫・背任等の罪により罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者 |
| 9号 | 暴力団員、又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 |
| 10号 | 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの |
| 11号 | 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が各号に該当するもの |
| 12号 | 法人で、その役員等又は政令で定める使用人のうちに各号に該当する者がいるもの |
| 13号 | 個人で、その政令で定める使用人のうちに各号に該当する者がいるもの |
| 14号 | 暴力団員等がその事業活動を支配する者 |
特に注意が必要な項目
第7号(拘禁刑以上の刑)
罪名を問いません。建設業と無関係の事件であっても、拘禁刑以上の刑に処せられていれば該当します。起算点は判決の日ではなく、刑の執行が終わった日、または執行を受けることがなくなった日です。執行猶予がついた場合は、猶予期間が満了すれば刑の言渡しが効力を失うため、その時点から許可を受けられる状態になります。
第8号(一定の罪による罰金刑)
こちらは罪名が限定されています。建設業法違反のほか、暴力団対策法違反、刑法第204条(傷害)・第206条(現場助勢)・第208条(暴行)・第208条の2(凶器準備集合等)・第222条(脅迫)・第247条(背任)、暴力行為等処罰法の罪が対象です。
「罰金だから大丈夫だろう」と考えるのは危険です。傷害や暴行での罰金刑は、5年間の欠格事由になります。一方で、これらに含まれない罪の罰金刑は該当しません。
第10号(心身の故障)
国土交通省令が具体的に定めており、建設業法施行規則第8条の2は「精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」としています。診断名だけで一律に判断されるものではありません。
第12号(法人の役員等)
法人の場合、役員の中に1人でも該当者がいれば法人として許可を受けられません。冒頭で触れた「本人は問題ないのに許可が下りない」ケースの多くがこれです。
更新のときに対象となる範囲
第8条柱書のとおり、許可の更新の場合は第1号と第7号から第14号までが対象になります。すでに許可を持っている事業者にとって、更新時に確認されるのは主に「破産」「刑罰」「暴力団関係」「心身の故障」「役員等の該当」といった項目です。
申請前に確認しておく書類と進め方
欠格要件は「該当しているかどうか」を書類で確認していく作業になります。実務では次の順序で進めると、手戻りが少なくて済みます。
1. 対象者を洗い出す
まず、確認が必要な人を漏れなくリストにします。法人の場合は次のとおりです。
- 取締役全員(常勤・非常勤を問いません)
- 執行役員や相談役・顧問のうち、法人に対し取締役と同等以上の支配力を持つと認められる者
- 商業登記簿に登記された支配人
- 支店長、営業所長など、常時建設工事の請負契約を締結する営業所の代表者
「非常勤だから関係ない」「名前だけの役員だから」という整理はできません。登記されている役員は全員が対象です。
2. 各人の書類を取り寄せる
対象者ごとに、次の2種類を取得します。
| 書類 | 発行元 | 内容 |
|---|---|---|
| 身分証明書 | 本籍地の市区町村 | 成年被後見人・被保佐人に該当しないこと、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者でないことなどの証明 |
| 登記されていないことの証明書 | 法務局 | 成年後見登記等がされていないことの証明 |
身分証明書は住所地ではなく本籍地の市区町村が発行します。本籍が遠方にある役員がいる場合は郵送請求に時間がかかるため、申請準備の初期に着手してください。
3. 気になる事情は先に確認する
書類だけでは分からないのが、刑罰歴です。身分証明書には刑罰歴は記載されません。過去に刑事罰を受けた可能性がある場合は、判決の内容(刑の種類・罪名・執行が終わった時期)を本人に確認する必要があります。
言い出しにくい話ではありますが、申請後に発覚するより、事前に把握して対策を立てるほうが事業にとってはるかに良い結果になります。
虚偽記載はそれ自体が許可されない理由になる
第8条柱書の後半は、申請書や添付書類に「重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているとき」も許可をしてはならないと定めています。
これは軽く見てはいけない規定です。過去の刑罰歴を伏せる、常勤していない技術者を常勤として届け出るといった行為は、この規定に触れます。さらに、虚偽の申請で許可を受けた場合は許可の取消し(同法第29条第1項第7号)につながり、取消しから5年間は許可を受けられなくなります(同法第8条第2号)。
ここで理解しておきたいのは、隠すことで欠格期間が新たに発生するという点です。欠格要件に該当している間は許可を受けられませんが、その期間が満了すれば申請できるようになります(期間や起算点は号によって異なります)。ところが虚偽の申請で許可を受けた場合、それが判明した時点で許可が取り消され、その取消しの日を起点として、あらためて5年間許可を受けられなくなります(同法第8条第2号)。不安な事情がある場合ほど、事前に専門家へ相談する価値があります。
よくある質問
Q. 昔の交通違反は欠格要件になりますか。
交通違反による反則金は行政上の措置であり、刑罰ではありません。ただし、飲酒運転や人身事故などで刑事罰を受けた場合は、その内容によって第7号や第8号に該当する可能性があります。罰金刑の場合は第8号に列挙された罪にあたるかどうかで判断が分かれるため、判決の内容を確認する必要があります。
Q. 役員が過去に該当していたかどうか、どう調べればよいですか。
本人に確認するのが基本です。加えて申請では、役員等について本籍地の市区町村が発行する身分証明書(成年被後見人等に該当しない旨などの証明)と、法務局が発行する登記されていないことの証明書を提出します。これらの書類を早めに取り寄せることで、申請前に問題を把握できます。
Q. 欠格要件に該当する人を役員から外せば許可を取れますか。
該当者が「役員等」および政令で定める使用人(支配人・支店や営業所の代表者)のいずれにも当たらなくなれば、法人としての欠格事由(第12号)は解消されます。
ただし注意が必要です。建設業法上の「役員等」は登記上の取締役等に限られません。同法第5条第3号は、業務を執行する社員・取締役・執行役やこれらに準ずる者に加え、相談役、顧問その他名称を問わず、これらの者と同等以上の支配力を有すると認められる者も「役員等」に含めています。したがって、登記を変更して役員から外したように見えても、実質的な支配力を持ち続けている場合は、依然として「役員等」に該当し、欠格事由が解消されていない可能性があります。
Q. 許可を取得した後に役員が欠格要件に該当したらどうなりますか。
建設業法第11条第5項により、欠格要件に該当するに至ったときは2週間以内に届け出る義務があります。届出をしなかった場合の罰則も定められています(同法第50条第1項第3号)。
Q. 一人親方で、従業員がいない場合も対象になりますか。
個人事業主の場合、対象は本人と政令で定める使用人です。使用人がいなければ、確認されるのは本人についてのみです。
Q. 執行猶予中でも許可を受けられますか。
執行猶予期間中は、刑の執行が終わった状態ではないため、第7号に該当します。猶予期間が満了すれば刑の言渡しは効力を失うため、そこから許可を受けられる状態になります。実刑の場合のように、さらに5年間待つ必要はありません。
Q. 破産したことがありますが、許可は取れませんか。
第1号が定めるのは「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」です。免責許可の決定が確定するなどして復権していれば、この号には該当しません。破産の経験そのものが永久に許可を妨げるわけではありません。
Q. 会社が過去に営業停止処分を受けています。影響はありますか。
営業停止の期間中は第5号に該当しますが、期間が経過すれば解消されます。ただし処分の原因となった行為の内容によっては、誠実性の判断で考慮される場合があります。
Q. 申請書に書かなくても分からないのではないですか。
許可行政庁は身分証明書や登記されていないことの証明書のほか、処分情報を確認する手段を持っています。そして、欠格要件に該当する事実を意図的に隠すなどして許可を受けた場合は、「不正の手段により許可を受けた」ものとして許可の取消事由になります(建設業法第29条第1項第7号)。この取消しを受けると、取消しの日から5年間は許可を受けられません(同法第8条第2号)。隠すことのリスクは、待つことのリスクより大きいと考えてください。
不安がある場合は申請前に相談を
誠実性と欠格要件は、申請してから該当が判明すると、それまでの準備が無駄になるだけでなく、許可申請自体が不許可の記録として残ります。
- 役員に過去の刑罰歴がある可能性がある
- 以前に別の許認可で処分を受けたことがある
- 該当するかどうか自分では判断がつかない
こうした事情がある場合は、申請書を作り始める前に確認するのが結果として近道です。該当していても「あと何年待てば要件を満たすのか」が分かれば、その間の事業計画を立てられます。
許可要件の全体像は建設業許可申請の4つの要件とは?で、依頼する場合の費用は建設業許可を行政書士に頼む費用と選び方で解説しています。
まとめ
- 誠実性(建設業法第7条第3号)は、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかでないことを求める要件です
- 「不正な行為」は詐欺・脅迫・横領等の法律違反、「不誠実な行為」は工事内容・工期などの契約違反を指します(許可事務ガイドライン)
- 対象は非常勤役員を含む役員全員と、支配人・営業所の代表者まで及びます
- 欠格要件(同法第8条)は14項目。更新の場合は第1号と第7号から第14号までが対象です
- 拘禁刑以上の刑は罪名を問わず該当し、罰金刑は列挙された罪に限られます。いずれも起算点は刑の執行が終わった日などです
- 虚偽記載はそれ自体が不許可の理由になり、虚偽で取得すれば許可の取消しと5年間の欠格につながります
愛知建設業許可サポートオフィス|やまじ行政書士事務所が選ばれる理由
- 役員に不安な事情がある場合も、申請前に該当の有無と「いつから申請できるか」を確認します
- 身分証明書・登記されていないことの証明書の取り寄せから、書類一式の準備までお任せいただけます
- 該当してしまう場合も、要件を満たせる時期に向けた進め方を一緒に設計します
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